町長コラム「郷里に響け」
令和8年4月 「高校存続と地域の未来」
「出会いは人生を豊かにし、別れは人生を深くする」
春になると、作家・僧侶の瀬戸内寂聴さんが話していた言葉を思い出す。出会いがもたらす成長や学び、その一方で別れが新たな「縁」を生み出し、自分自身を見つめ直すきっかけになるという意味が込められているそうだ。
春は出会いの季節、その一つとして挙げられるのが「高校入学」だ。しかし、少子高齢化の波は町内で唯一の高校にも深刻な影響を及ぼしている。伊具高校では、令和8年度入学者選抜試験において、定員120名に対する出願者数が23名、志願倍率0.19にとどまった。これまで、地域に深く根差した教育を実践し、多くの卒業生が地元に残って地場産業を支え、長年にわたり地域の発展に貢献してきた。少子化に加え、私立高校の授業料無償化の影響から、全国的に公立高校の志願者が減少し、公立離れが進んでいるとの報道もあるが、地域の高校への志願者の減少には強い危機感を感じている。
春は別れの季節でもある。3月1日、伊具高校の卒業式に出席した。卒業生は48名と、昔に比べると人数こそ少ないが、生徒一人ひとりの表情や立ち振る舞いからは、伊具高校で過ごした3年間の学業や部活動などを通じて得た達成感と自信が満ち溢れていた。式の終盤、卒業生から保護者へ感謝の花が贈られると、保護者のみならず、多くの卒業生も涙を浮かべていた。これまで支えられてきた感謝の気持ちや、「これからは自分の力で歩んでいく」という力強い意志が垣間見え、未来を担う若者たちの輝きが感じられる、感動の卒業式であった。
地域の未来を豊かにするためには、学校のみならず、地域全体が若者にとって魅力的な場所になる必要がある。若者たちが「ここで暮らし続けたい」と心から思える地域づくりを目指していかなければならない。


