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町長コラム「郷里に響け」

令和6年7月 「変わらないもの、変わりゆくもの」
町長コラム「町長室から 郷里に響け」令和6年7月

 我が家は丸森町の中でも山間にある。森や木々、道端の草花、そして小鳥のさえずりに季節の流れを感じて、自然の豊かさを満喫できる環境だ。しかし、私が幼かったころに比べると、町の自然環境は随分と変わってしまったもので、日本の原風景は影を潜めつつあり、一抹の寂しさを感じるときがある。でも、時々ふと立ち止まって、あらためて身近な自然を五感で感じてみてほしい。その時間こそが、この町の大切なことを気付かせてくれる瞬間なのではと思っている。
 
 ある夜、就寝しようと部屋の電気を消したとき、網戸の外が一瞬光ったように感じた。周囲に人工的な明かりがほとんどない我が家の外に一匹のホタルが飛んでいたのだ。ここ数年、見ることができなかったホタルからしばらく目が離せなくなった。
 
 次の日の夜、家の前の田んぼには十数匹のホタルが光を放ちながら静かに舞っていた。離れては近づき、近づいては離れて舞う姿に、時を忘れて眺めていた。幼い頃、ホタルを捕まえて蚊帳の中に放し、布団に寝転がって見た日のことを思い出す。一瞬だけ、時間が少年時代に戻った気がした。
 
 昔とは違い、道路はアスファルトに舗装され、田んぼの水路はコンクリートになっても、この地で生き続けているホタルの力強さに感動するとともに、「いつまでこの風景を見ることができるだろうか」と考えさせられる時間でもあった。周囲の環境のように変わってきた中にも蛍のように変わらないものもある。その反対に、変わらないものの中には、これから変わらなければならないものもあるのではないだろうか。
 
 町は、少子高齢化や人口減少、復旧・復興のなどの多くの課題を解決していかなければならない。昔から変わらずにあるものを大切にしながらも、変わりゆく社会情勢に適応して、少しでも進歩(変化)するようにと、数年ぶりに我が家に現れたホタルが、私にそう教えてくれたような気がした。

6月に小斎地区で撮影
6月に小斎地区で撮影