町長コラム「郷里に響け」
令和7年8月 「若者と暑い夏」

さあ、今年も齋理の夏が来た。
毎年、多くの方が楽しみにしている夏の風物詩、齋理幻夜が明日開宴する。夜空に響く太鼓や吹奏楽の音色、屋敷の中では語り部たちが静かなひとときを演出する。催し物ひとつひとつが訪れる人に思い出を紡ぐなか、私は何を持って帰ろうか。
開宴は17時30分、浴衣姿の眩しい伊具高校生が司会を務める。屋敷前の通りは、開宴を待ちわびる多くの人だかり、齋理のダンポさん(歴代の当主の愛称)の優しく風情ある声色で開門が宣言され、いよいよ齋理屋敷の門が開く。
あちこちの屋台から漂う美味そうな香りと、それに誘われた人の列、毎年この日の商店街は若者があふれ、その賑わいを嬉しく感じる。やはり活力と元気の源は若者の笑顔なのだろう。
幼い頃、祖母が毎年のように夏まつりに連れて行ってくれた。当時は山車も曳かれて盛り上がり、少しばかりの小遣いをもらって嬉しかったこと。また、丸森小学校での大相撲巡業や映画館で映画を見たこと。通りは車も少なく常に歩行者天国であったことなど。幻夜に身を置くと、昔の記憶が蘇り、過去と現在を行き来する自分が、この祭りに別な趣を与えてくれる。
今、さらなる賑わいの創出に向けて、齋理屋敷向かいの八雄館の建て替えを行っているが、商店街の空き店舗を活用した新しい事業が若者たちの手でスタートしている。町に戻ってきた人も、縁あってこの町に来た人も、町と人に魅力を感じてこの町に居続けようと、新たな賑わい創りに奮闘している。
帰省で立ち寄った人も、祭りを楽しもうと初めて訪れた人も、暑い日の齋理幻夜をきっかけに何かを感じ、この若者たちのような関わりが広がってくれれば心強い。
